君に出会うために - 聖翔学園物語 -

君に出会うために 5 - 踏み出す勇気 -

 カバンの中に紅茶を入れて、零の後ろをついていく。
 先ほどの出来事が広まっているのか、ちくちくとした視線は少し和らいでいた。
 教室棟を通り抜けると、グラウンドの向こうに白い壁の大きな建物が見えた。どうやらあれが講堂らしい。
 大きく開かれたその扉に、皆が吸い込まれて行くのが見えた。
 その入り口の前に立ちったとき、その大きさと威圧感にすこしだけ怯む自分がいた。
 前を歩いていた零はいつの間にか立ち止まり、鈴鹿の方を振り返っていた。
 この聖翔学園そのものが、もともと自分がいた世界とはまったく異なる世界である。
 今いる世界と、これから飛び込むであろう世界。その境界線が、この講堂であるような気がしていた。
 自分は受け入れられるのだろうか?
 これまでがむしゃらに勉強だけをしていたため、そんなことを考えてみたこともなかった。
 自分と同じ立場の零は、どう思ってるんだろう?
 ちらりと隣を見ると、一瞬のためらいもなく中に入っていく零がいた。
 入っていい、と、言われているようで、その姿に勇気付けられる。
(大丈夫、大丈夫)
 自分にそう言い聞かせて、一歩足を踏みしめる。
 そんな鈴鹿の姿を、零がそっと見守っていたことを、彼女は気づいていなかった。


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 講堂は思っていたよりも立派なもので、備え付けられた椅子が並び、ステージが見やすいように後ろに行くにつれ階段状に高くなっている。
 座り心地もよさそうな一人がけの少し大きめの椅子はビロード張りで、それぞれに簡易テーブルが備え付けられている。
 どこかのホールか映画館みたい、と、ぼんやりと思っていた鈴鹿に、零がこえをかけた。
「おまえ、1-Aだからあのへんな」
 零が指し示した先に目を向ける。
 すでに半分くらい席は埋まっていた。それはこれからクラスメートになるはずの生徒たち。さすがに緊張に体を強張らせていると、零がぽんと頭を叩いた。
「心配すんな」
 鈴鹿はコクンとうなずき、歩き始めた。

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