君に出会うために - 聖翔学園物語 -

君に出会うために 1 - プロローグ -

 聖翔学園高等部。

 この学園は両家の子女、世界に6つある大財閥でも上層部に位置する家系の者が多く通う、名門中の名門である。
 各財閥のトップである総帥の御曹司、もしくはそれに準ずる家系の後継者と目されている者などが籍を置くことも少なくなかった。


 通常は莫大な授業料・寄付金などを支払わなければこの学園には入学できないのだが、聖翔学園は広く門戸を開くことを宣言し、奨学生制度も存在していた。
 成績優秀者を各学年に6名ずつ、すべての費用を無料としてこの学園に入学させるという制度なのだが、その条件として、すべての試験にて上位6名内に入ることを義務付けていた。
 一度でもそこから落ちることがあれば奨学生資格が取り消され、通常の生徒と同じ扱いとなる。
 その過酷さ故に、途中で挫折、退学するものが後を絶たないものであった。

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 鞄の中に必要なものをすべて入れたのを見計らったかのように、扉をノックする音がした。
 その音のリズムは既に耳慣れたものだったので、橘鈴鹿は振り返ることなく、「いいよ」と返事をした。
 その返事を待ってましたとばかりに勢いよく扉は開かれ、好奇心に彩られた瞳で中をのぞいてきたのは、従妹の夏原由紀だった。
「あしたの準備、終わったの?」
 由紀の問いに、鈴鹿は振り向いた。
「大丈夫だと・・思うよ。明日は入学式だけだし」
「そっか。いいなぁ、鈴鹿は。聖翔だもんねぇ。」
「なに言ってるの。一緒に受けようって言ったのに、早々にギブアップしたの、由紀じゃない」
「だってぇ・・・。零くん、厳しすぎるんだもん・・・」
 顔をしかめ、あさっての方向を向く由紀に、確かにそうだった、と鈴鹿も同意した。


 聖翔学院高等部への受験を伯父に薦められた鈴鹿は、同じく聖翔学院高等部に在籍する鈴鹿の従兄・高塚零に家庭教師をしてもらっていたのだが。
 そのスパルタたるや、想像を絶するもので、いつもはヘラヘラと冗談ばかり言う従兄の豹変ぶりに仰天したものである。
 軽い気持ちで鈴鹿にくっついてきた由紀などは、10分もしない内に逃げ帰ってしまった。
 彼曰く、「俺が兄貴に教えてもらってた時なんて、こんなものじゃなかった」そうだが、二人の少女をおびえさせるには十分すぎる迫力であった。
 由紀は聖翔学園はあきらめたものの、それより数ランク低い別の高校を受験し、無事合格していた。
 由紀の家に世話になることになって以来、これまでずっと同じ学校だった二人は、初めて違う学校に通うことになる。そのことには少なからず不安を感じてはいたけれど。
「由紀は入学式、明後日だよね。」
「そうだよ。楽しみなのっ!」
 別の高校-制服がかわいいからという理由で選んだと本人は言っていたが-への入学が決まっている由紀は、先日届いた真新しい制服を自慢げに見せてくれた。
 私立なのでお金がかかるわね、といいつつも、うれしそうだった叔母の顔を思い出す。


私の両親も、聖翔に行くことを喜んでくれているかな。


 一人喋る続ける由紀を見ながら、心の中で呟いていた。

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