時の扉 闇の扉

時の扉 闇の扉 7

「ど、どこにいったの・・・?」
辺りを見回すが、その姿はどこにもない。まるで、空気に溶けたかのように、忽然と消えていた。
「あの人って、一体・・・」
呆然とたたずんでいる美緒の耳に、自分を呼ぶ声が聞こえた。
目の前の道を、こちらに向けかけてくる少女。それは、見知った人物。
「セ、リア」
少女は駆けて来た勢いそのまま、美緒に抱き着く。
「よかった・・・美緒ったら帰って来ないから、心配してたのよ」
「あ、ごめん、セリア」
セリアはぱっと離れ、美緒を真っすぐに見つめる。
「何があったの?」
「あ、ん」
美緒は事情を話す。もちろん、青年のことも含めて。
「そうか、その人が、美緒を助けてくれたのね」
心なしかほっとして、美緒を見る。美緒を無事送り届けてくれたところを見ると、その青年は信用に足る人物のようだ。
「ねえ、セリアも助けられたの?ファールって人に」
「う・・ん、まあ、そういうことになるかな」
こりこりと頭をかく。その仕草が可愛らしい。
「セリアはファールっていう人を知ってるの?」
セリアはどこか居直ったように、胸を張る」
「言ってなかったっけ?美緒を虚無の森から救い出したの、ファール様だよ」
美緒は驚きに、二の句が続かない。ぱくぱくと口を動かす。では彼は、信頼してもよかったのでは?
「ど、どうしてそんなことをはやく・・・」
「ごめんね、言うのを忘れちゃってたあ」
あっけらかんとセリアはいう。その無邪気さは、美緒の苦労を全然おかまいなし。
「セ、セリア!!」
耳元で怒鳴られ、セリアは顔をしかめる。
「そんなに怒鳴らないでよ。よくあるでしょ、忘れちゃうことって」
「だ、だって、それ知らなかったもんだから、わたしったら、あの人にお礼もいってないよう」
ヒラヒラと手を振り、セリアはあくまでも能天気。
「だいじょうぶだって。そのうち会えるさっ」
「気楽に言ってくれるね」
美緒は大きな大きな溜め息をついて見せた。恐らく彼には、礼儀も知らない奴と思われたことだろう。何故かそれが悲しかった。その理由は本人にも解らない。
「あ、そうそう」
セリアは懐からゴソゴソと何かを取り出す。それがきれいな球形を描いている物質だと気づき、美緒はあっと声を出す。
「それ、もしかして」
「そう。これが宝玉の一つ、青玉よ」
それは暮れ行く空をそのまま写したような、綺麗な瑠璃色であった。セリアの瞳の色でもある。
掌にすっぽりと収まる大きさではあるが、神秘的な光を放つ物である。それを太陽に透かすと、中に小さな飾り彫りが浮かび上がる。小さくてそれがなんだか美緒には解らなかったが、
「竜を象ってるの」
とセリアはいう。確かに、そう見えなくもない。だが、この球の中にどうやってそれを施したのかまでは教えてくれなかった。
「すごい技術だね」
美緒の言葉に、セリアは心底うれしそうに微笑む。まるで、自分の技術を褒められたかのように喜んでいる。美緒がそれをセリアへと返すと、少女は無造作に袋の中に放り入れる。彼女にとって、それは価値あるものではないのだろうか。
「さっ、帰りましょう」
そのままスキップでもしそうな上機嫌で、セリアはそう言った。

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